病気を抱えながら司法試験予備試験を目指してみる。第2回 ー症状改善に向けて 準備編ー

高次脳機能障害の症状改善に向けて

今回から何回かにわたり、高次脳機能障害の症状を改善すべくどのようなことに気をつけ、どのようなことをしたのか、を記してみようと思う。

 

ひとつ注意してほしいことがある。今後、紹介する手法は絶対的(科学的に)に正しいものではない。あくまで自らの経験に基づいて語るに過ぎない。

もっとも、一応私自身調べているため、スピリチュアルみたいな変なことにはなってないだろうと思う。

そして、私は、同じ病気を抱える方々の中でも、比較的症状が軽い方である。そのため、私がこれから書くことすらできないくらい症状が重い人がいることは、頭の片隅に置いておいてほしいと思う。

 

 

症状改善に向けて行動する前にするべきこと

前回、病気と向き合い受け入れることを記したと思う。それが重要な理由は、自分のことを理解し、分析するためである。

高次脳機能障害の症状は、千差万別、人それぞれである。そのため、どの脳機能が落ちているかを特定しなければならない。

その分析・特定が疎かになると、リハビリを行うにも、何をすればよいかわからなかったり、してみたものの効果が出ない、ということになりかねない。

 

早くなにかしなければと焦る気持ちはわかるが、焦って方向性の違うことをしてもほぼ意味はない。それは、自分の”焦り”という感情を一時的に解消するものに過ぎない。結果的に遠回りになる。

だから、

この問題の分析・特定という作業を丁寧にしよう。周りの人に手伝ってもらいながら。

 

前提

分析にも必要な前提知識をここで簡単に紹介する。

記憶

”おぼえる” みなさんが普段何気なく使うことが多い言葉だと思う。しかし、これから症状を特定し、その対処法を考えるには、何気なくのままではいけない。

思うに、一般的な”おぼえる”の語には、

①見たもの・書いたもの・聞いたものを覚える作業

           ↓

②脳の引き出しからそれを取り出す作業

という、2つのプロセスが混在しているように感じる。

 

ドラえもんの4次元ポケットを思い浮かべていただけるとわかりやすいだろうか。

4次元ポケットに物を入れる作業と、4次元ポケットから物を取り出す作業は別物である。

 

 

そして、記憶には、短期記憶と長期記憶の2種類あるのは、有名だろう。

一眼レフを例に出しながら説明してみようと思う。

 

シャッターボタンを押すと、センサーに刻まれた光がデータとして出力される。そして、SDカードに記録される前に、バッファと呼ばれる箱に一時的に保存され、その後、SDカードに書き込まれる。

SDカードの性能にもよるが、写真データをSDカードに書き込むのには時間がかかる。バッファがないと、前がつっかえて次の写真を撮影することができない。そのため、バッファとよばれる待合室を用意することで、そこにデータを一時的に保存する傍ら、次々とSDカードに書き込み、新たにシャッターが切れるようにしているのである。

 

これはあくまで私の考えでしかないが、

短期記憶は、バッファに一時保存している状態である。長期記憶は、SDカードに書き込まれている状態である、といえるのではないだろうか。

 

ここまでが、記憶という点における前提。

 

疲労

今日は、頭が働かない。調子悪い。みなさんもこのような経験は頻繁にあるように思う。一概には言えないが、ほとんどは脳疲労から回復していない状態である、といえるだろう。

 

私の知識の限りだが、簡単に言うと、

脳が働く→脳細胞が老廃物を出す→老廃物が大脳皮質の表面に溜まる→老廃物を脳脊髄液が洗い流す→脳疲労回復

このようなプロセスで脳疲労から回復するらしい。

ここでのポイントは、疲労物質を洗い流す脳脊髄液の循環ということがわかる。

脳脊髄液の循環に関係するのは、血流である。

脳脊髄液は血液がろ過されて生産されるといわれている。さらに、脳脊髄液は、脳の毛細血管に吸収されることもあるらしい。

ようするに、脳脊髄液と血液は、脳疲労の鍵を握るということだ。

 

これが、脳疲労の前提知識。

 

問題の特定

この分析・特定作業において、非常に有用だったのが、大学受験の勉強である。大きく分けて、英語、数学、国語、理科、社会と満遍なく良問が用意されている。

 

国語ならば、文章を読み、理解できるか。

数学ならば、公式を使い、論理的に思考できるか。

英語ならば、主に単語の記憶はできているか。etc.

 

国語

私の場合、前回も書いたように、文章を読もうとすると文字がバラバラに脳に流れ込んでくるような症状があった。そこで、いろいろ実験してみることにした。

 

まず、他の文章を真っ白な紙で隠し、ひとつの文章だけにしてみた。文字がなだれ込んでくることなく文字を目で追いかけることはできるのを確認できた。

だが、一体、何が書いてあるか理解できなかった。

 

次に、ひとつの文章を文法的に分解してみた。それこそ、小学生がやるように、主語、述語...と。

これなら何が書いてあるか理解できた。

 

ここまでしてわかったことは、脳に入る情報量が多い場合、処理しきれないということだ。すなわち、情報処理能力が著しく落ちていた。

 

ひとつ、特定できた。前進だ!

 

数学

数学を体系的にわけると、式をメインとした代数学と図形をメインとした幾何学解析学もあるが、今回においては重要ではないため省略)に分けられる。

 

どちらの問題もできず、解答をみても理解できないことから、論理的思考ができなくなっていたのは明白であった。

 

それはそうと、代数学なら少しまだできたが、幾何学がまったくできなかった。できないというのは、図形が頭で思い浮かべることができない。立体ならなおさら。

 

これに関連することであるが、2Dの地図を頭の中で3Dにすることが得意だったのであるが、これもできなくなっていた。

 

結論として、論理的思考ができなくなり、図形・空間認識能力が著しく低下していたことがわかった。

 

英語

みなさんは、単語を覚えるときどのようにしておぼえただろうか。耳で聴く?声に出す?必死に書く?眺めるだけ?いろいろあるだろう。

自分は、ずっと写真記憶だった。

 

記憶の仕方ではなく、上記であげた①、②のどちらに問題があるかを特定すべく、

まず単語を覚えようとする。そして、30秒、1分、3分、5分...3日、1週間、覚えているかを確認するという実験をした。

3分まではいけた。それ以降は無理だった。

 

ここから推測できることは、長期記憶ができていない、ということである。

しかし、短期記憶から長期記憶になっていないのか、それとも引き出し(SDカード)には入っているものの、取り出せていないのかまでは特定できない。ただ、普通に考えて、取り出せていないと考える方が合理的なように思う。

短期記憶→長期記憶になっていないという結論に至ったところで、それはもう自分でどうにかできるものではなく、下手したら大学病院送りだろう。

 

まだ、取り出せていない、と考える方が手の打ちようはある。

すなわち、思い出す(取り出す)という力が落ちていると仮定することにした。

 

その他

約30分で思考停止するのは、脳疲労が原因であろうことはたやすく想像がつく。脳脊髄液減少症の影響で、脳脊髄液の流れが悪く、老廃物を洗い流せていなかったのだろう。

 

脳脊髄液減少症は脳幹が圧迫されるため、自律神経が乱れ、血流も悪くなっていた。

この血流の悪さを改善すべく、自律神経を整えなければならないのは一目瞭然であった。

 

まとめ

上であげた例は、あくまで一例であり、それも自分に合った特定の仕方である。

このやり方で特定できるのは、各科目の勉強において必要な要素を理解していたからのように思う。

その要素ひとつひとつのチェックをすることにより、自らの脳機能の問題の特定をした、ということである。

 

ただ、皆さんがこの作業をするときに大事なことは抽象化できるような気がする。

それは、自分があくまで問題の特定のためにそれを行っている、ということを忘れないようにすることだと思う。それを(今回で言うと国語、数学、英語)できるようになることを目的として、それをしているのではない。

だから、できなくても問題はない。できないという結果に目を向けるのではなく、”どうしてできないのか?”に目を向け、そして考えるべきである(考えることがあまりできない分、他人に頼ることになるのだが...。)。

 

そして、思いつく限りすべてのことをしたら良いと思う。自分の身体・脳のことは、自分にもなかなかわからないが、他人にはもっとわからないのである。そうすると、自分で、自分の身体と対話するしかない。そして、その対話をするツールは様々ある。

様々あるが、やってみないと、データが得られない。

エラーを恐れることなくトライ&エラーを繰り返そう。そうすることで、データが蓄積し見えてくるものが、わかってくるものがある(ナンパの練習みたいですね←何言ってんだ?)。

 

第2回目の終わりに。

日常生活、リハビリの内容も書きたかったが、次回に回そうと思う。

そして、ここまで書いてきたように周りの人の助けが不可欠である。だが、残念ながら、周りに助けてくれる人がいない人もいることだろう。それに関してもまた回を改めて言及してみるつもりだ。

気持ちの面ももちろん。

 

今回も読んでいただき、ありがたい限りである。

 

次回へ続く。